MORION PRESENTS
Morion Presents

A Proposal from the LOW STRINGS

Viola藤田 友喜 Violoncello佐々木 杜洋 Contrabass小野寺 悠斗
2026.8.22SAT
OPEN 18:30 / START 19:00
仙台市太白区文化センター 展示ホール
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01 — Concept

Beneath the Melody

低弦からの提言——。
「ヴィオラ以下」でコンサートをしたら、何が起こるのか。

ヴィオラ、チェロ、コントラバス。オーケストラでも室内楽でも、多くの場合この三つは「支える側」に回ります。旋律を担う高音弦の下で、和声を満たし、拍を刻み、音楽の重心をつくる。聴き手の耳がまっすぐそこへ向かうことは、あまり多くありません。

ですが作曲家たちは、ずっと前からこの音域の可能性に気づいていました。ベートーヴェン、ロッシーニ、ディッタースドルフ、アルブレヒツベルガー——今夜並ぶ四人は、いずれも低音弦楽器を主役の位置に立たせた作品を残しています。それらは名人芸の実験であり、友人への贈り物であり、ときにささやかな冗談でもありました。

今夜のプログラムは、その提案(Proposal)を二百数十年ぶりに受け取り直す試みです。ヴィオラとコントラバス、ヴィオラとチェロ、チェロとコントラバス——三通りの組み合わせをひととおり聴いたあと、最後に三人がそろいます。伴奏から解放された低音弦が、どんな歌をうたうのか。どうぞ、いちばん低いところから聴いてみてください。

本公演は、杜音株式会社のコンサートシリーズ「MORION PRESENTS」第1回公演です。

02 — Instruments

Three Low Voices

Register Map / 音域図

各楽器が出せるいちばん低い音から、よく使われる音域まで。今夜はこの帯域だけで音楽が完結します。

Violinヴァイオリン
G3 →
Violaヴィオラ
C3 →
Celloチェロ
C2 →
Contrabassコントラバス
E1 →
C1C2C3 C4C5C6C7

Scale Comparison / 大きさ比較

同じかたちの楽器が、これだけ違う。数値は全長(楽器全体の長さ)で、実際の比率どおりに描いています。低くなるほど体は大きくなり、音は遅く、深くなります。

Viola 全長 約 68 cm Violoncello 全長 約 120 cm Contrabass 全長 約 180 cm

Viola

ヴァイオリンより五度低く、体は一回り大きい。人の声にいちばん近いと言われる、翳りをもった中低音。今夜は三曲で主役側に立ちます。

Lowest
C3(131 Hz)
Strings
C - G - D - A
Body
約 40 cm
Total
約 68 cm

Violoncello

低音を支えながら、テノールの音域では朗々と歌える二面性をもつ楽器。今夜のプログラムでは、その両方の顔が入れ替わり立ち替わり現れます。

Lowest
C2(65 Hz)
Strings
C - G - D - A
Body
約 75 cm
Total
約 120 cm

Contrabass

弦楽器のいちばん低いところ。記譜より一オクターヴ低く響き、音というより空気の振動として体に届きます。独奏楽器としての姿は、意外なほど機敏です。

Lowest
E1(41 Hz)
Strings
E - A - D - G
Body
約 110 cm
Total
約 180 cm
03 — Performers

The Players

ヴィオラ 藤田 友喜
Viola

藤田 友喜

4歳よりヴァイオリンを始め、大学3年次よりヴィオラの演奏を始める。福島県立橘高等学校、福島大学音楽科、及び福島大学大学院音楽科卒業。

2016年にベルリンフィルハーモニー管弦楽団の元首席奏者である、ライナー・モーク氏のマスタークラスを受講。また、2016年より、毎年に渡りウィーンを訪れ、ウィーン音楽大学教授であるゲオルク・ハーマン氏のプライベートレッスンを受ける。

2019年7月から10月にかけて仙台フィルハーモニー管弦楽団の演奏会に客演奏者として出演。現在は、フリーランスとして、オーケストラや室内楽の演奏会に出演するなど演奏活動を行う。

2019年より藤田ヴィオラ・ヴァイオリン教室を主宰し、全日本ジュニアクラシック音楽コンクールの審査員を務めるほか、福島高校、福島県立医科大学、醸芳小学校の部活指導を行うなど、後進の指導にも力を入れている。

これまでにヴァイオリンを保井頌子、ヴィオラを井野邊大輔、室内楽を金谷昌治、各氏に師事。

チェロ 佐々木 杜洋
Violoncello

佐々木 杜洋

仙台市在住。常盤木学園高等学校音楽科、山形大学音楽芸術コース、同大学院音楽芸術分野卒業。

2026年に杜音株式会社を設立。「みんなに音楽を」をミッションとし、弦楽器専門店「杜音バイオリン」、音楽教室「杜音ミュージック」、YouTubeチャンネル「杜音スタジオ」など、多角的な音楽事業を展開する。

2021年に弦楽ロックバンド「VA/VC」を結成。ライブやイベントなどで活動し、定禅寺ストリートジャズフェスティバル、島村楽器弦楽器フェスタなどに出演する。

Spotify他にて、ポッドキャスト「佐々木杜洋のスタジオ」を配信中。

これまでに塚野淳一、北本秀樹、久良木夏海の各氏に師事。山形大学と山形交響楽団の連携による音楽教育推進事業にて、鈴木秀美氏の公開レッスンを受講。

チェロの生徒様を募集中です。morionmusic.com よりお問い合わせください。

コントラバス 小野寺 悠斗
Contrabass

小野寺 悠斗

宮城県大和町出身。9歳よりコントラバスを始める。

題名のない音楽会「山田和樹が育む未来オーケストラ」、全国音楽高等学校合同オーケストラなどに出演。

第38回宮城県管打楽器ソロコンテスト、JBA東北大会中学生の部金賞。全日本弦楽コンクール奨励賞。

これまでにコントラバスを名和俊、谷口正美に師事。ジュニアオーケストラでは亀子政孝、田中洸太郎、高橋彗希の各氏の指導を受ける。

04 — Program Notes

Four Proposals

01
Carl Ditters von Dittersdorf
1739 – 1799

Duetto for Viola and Violone in E-flat major, Kr. 219

ヴィオラとヴィオローネのための二重奏曲 変ホ長調 Kr.219
ヴィオラ + コントラバス E♭ major 第1・第2楽章

「ヴィオローネ」とは、今日のコントラバスの前身にあたる楽器です。ただし18世紀のウィーンで使われていたそれは、現代のコントラバスとは大きく異なるものでした。5本の弦を三度と四度を組み合わせて張る独特の調弦法。ヴィオラ・ダ・ガンバの流れを汲むフレット。この構造が、巨大な楽器に驚くほどの身軽さと、澄んだ高音を与えていました。

Tuning / 調弦くらべ
ウィンナー調弦18世紀ウィーンのヴィオローネ(5弦・フレット付き) FADF♯A
現代のコントラバス4弦・四度調弦 EADG

ディッタースドルフはハイドンやモーツァルトと四重奏を弾き合った仲であり、彼自身も名うてのヴァイオリニストでした。この楽器のために2曲の協奏曲を残していますが、それらはいずれもニ長調——ウィンナー調弦の開放弦がもっともよく共鳴する調です。

その相手として想定されていたのが、当代随一のコントラバス奏者ヨハン・マティアス・シュペルガー(1750–1812)だと考えられています。楽譜は彼の遺品コレクションを通じて今日まで伝わり、現在はドイツ・シュヴェリーンの図書館に「Mus 1689」の整理番号で保管されています。

全5楽章。ヴィオラとヴィオローネはどちらが上でも下でもなく、旋律を受け渡し続けます。とりわけ緩徐楽章では、ヴィオローネがヴィオラより高いところで歌う。伴奏楽器という前提が、この曲には最初から存在していません。

Movements
  1. IAllegro moderato
  2. IIMenuetto
  3. IIIAdagio
  4. IVMenuetto
  5. VThema moderato con variazioni

本日は第1・第2楽章を演奏します。

02
Ludwig van Beethoven
1770 – 1827

Duet “mit zwei obligaten Augengläsern”, WoO 32

二人の眼鏡をかけたオブリガートの者のための二重奏曲 変ホ長調 WoO 32
ヴィオラ + チェロ c. 1795–98 E♭ major

タイトルは、そのままの意味です。オブリガートとは本来「省略できない・必須の」を意味する音楽用語で、通常は楽器のパートに対して使われます。ベートーヴェンはそれを眼鏡に付けました。この曲を演奏するには、眼鏡が2つ必要である、と。

この副題の理由は単純で、弾く二人がどちらも近視だったからです。ヴィオラを弾くのはベートーヴェン自身。彼は故郷ボンの宮廷楽団でヴィオラ奏者を務めた経歴の持ち主でした。チェロはニコラウス・ズメスカル男爵。ハンガリー宮内庁の官僚で、腕の立つアマチュア・チェリストで、そしてベートーヴェンがウィーンで最初に得た親友のひとりです。ベートーヴェンは生涯に100通を超える手紙を彼に書き、ペン先やワインの調達を頼み、「音楽伯爵」という架空の称号で呼んでいます。日曜ごとにズメスカル邸で開かれた室内楽の会が、若いベートーヴェンの実験場でした。

作曲は1795年から98年ごろ。出版する予定はなく、実際に生前は出版されませんでした。自筆譜は走り書きで、強弱記号もアーティキュレーションもほとんど書かれていません。書く必要がなかったのです——弾くのは自分と親友の二人なのですから。楽譜はロンドンの大英図書館が所蔵する「カフカ・スケッチ帳」の中に、散り散りの断片として残りました。第1楽章、23小節だけのアダージョ、メヌエット、そして終楽章のスケッチ。20世紀に入って音楽学者たちがそれを一つずつ発掘し、1963年になってようやく「WoO 32」という一つの作品として組み直されます。

第1楽章の冒頭に、少し耳を留めてみてください。この動機は数年後、弦楽四重奏曲第4番 ハ短調 作品18-4 に姿を変えて再び現れます。友人との私的な戯れとして書いた楽想が、本格的な作品へと移されていく。この未完のトルソには、そうした工房の匂いが残っています。

Movements
  1. IAllegro
  2. IIMenuetto
03
Gioachino Rossini
1792 – 1868

Duetto for Cello and Double Bass in D major

チェロとコントラバスのための二重奏曲 ニ長調
チェロ + コントラバス 1824 / London D major

1824年、32歳のロッシーニはロンドンにいました。すでにヨーロッパ中の劇場を席巻していた彼を、ロンドンの富裕層は競って自邸のサロンに招きます。そのひとり、金融界の名家サロモンズ家のフィリップ・ジョセフ・サロモンズが、ロッシーニに一曲を依頼しました。謝礼は50ポンド。当時としては破格の金額です。

サロモンズはアマチュアながら相当な腕のコントラバス奏者で、その師がドメニコ・ドラゴネッティ(1763–1846)でした。「コントラバスのパガニーニ」と呼ばれた人物です。彼が使っていたのは3本弦のコントラバスと、外側に反った独特の弓。低音の重さや濁りが出にくく、中高音がよく抜ける楽器でした。この曲のコントラバスのパートは、その楽器とその奏者を目の前にして書かれています。

Tuning / ドラゴネッティの楽器
3弦コントラバスドラゴネッティが好んだ仕様 ADG
現代のコントラバス4弦・四度調弦 EADG

急・緩・急の3楽章。第1楽章はオペラ・ブッファのやりとりそのものです。第2楽章は、器楽に移し替えられたベル・カント——本来なら喜劇の道化役をあてがわれがちなコントラバスが、ここではまぎれもないアリアを歌います。そして終楽章は「ジンガレーゼ(ジプシー風)」。技巧の乱舞のうちに幕が下ります。

この自筆譜は、その後144年間サロモンズ家に秘蔵されました。1968年にサザビーズのオークションへ現れ、現在はスイスのパウル・ザッハー財団にあります。譜面には、初演したドラゴネッティ自身の手で強弱や弓の指示が書き加えられています。

Movements
  1. IAllegro
  2. IIAndante molto
  3. IIIAllegro
04
Johann Georg Albrechtsberger
1736 – 1809

Divertimento in C major

ヴィオラ、チェロ、コントラバスのためのディヴェルティメント ハ長調
ヴィオラ + チェロ + コントラバス C major 三重奏

ヨハン・ゲオルク・アルブレヒツベルガーは、ウィーンのシュテファン大聖堂の楽長を務めた対位法の大家でした。そして1794年から95年にかけて、ある若者に対位法を教えています。ベートーヴェンです。今夜2曲目に置かれた《眼鏡付き》は、そのレッスンを終えた直後に書かれました。

この曲の編成は、ヴィオラ、チェロ、コントラバス。ヴァイオリンがいません。高音が欠けると和音は密集し、響きは濁りやすくなります。それを避けるために作曲家がとった方法が、三つの声部をそれぞれ独立して動かし、音域を丁寧に振り分けることでした。対位法の大家が、その技術を娯楽のための曲(ディヴェルティメント)に惜しみなく注ぎ込んでいます。結果として立ち上がるのは、何かが欠けた響きではなく、切れ目のない、ビロードのように均質な低音のタペストリーです。

プレストで始まり、メヌエット、ウン・ポコ・アンダンテを経て、アレグロ・ノン・トロッポで閉じる。終楽章をあえて走らせない配置は、低弦だけのアンサンブルを知り尽くした人の判断でしょう。

なお、この作品にはひとつ謎があります。楽譜の伝わるメルク修道院の写本には「アルブレヒツベルガー氏による」とだけ記され、名前がありません。そのため、チェロ奏者でもあった兄アントン・アルブレヒツベルガーの作品とする説もあります。誰の手によるにせよ、この響きが18世紀ウィーンの修道院で実際に鳴っていたことは確かです。

Movements
  1. IPresto
  2. IIMenuett
  3. IIIUn poco andante
  4. IVAllegro non troppo
05 — Chronology

Same City, Same Century

四人の生涯は、驚くほど重なり合っています。アルブレヒツベルガーはウィーンで対位法の大家として知られ、1794年から翌年にかけてその教えを受けた弟子のひとりが、24歳のベートーヴェンでした。ディッタースドルフはハイドンやモーツァルトと弦楽四重奏を弾いた仲間。ロッシーニだけが少し遅れて登場し、オペラの世界から低音弦に目を向けます。今夜の4曲は、およそ半世紀のあいだに、ほとんど地続きの人間関係のなかで生まれました。

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Albrechtsberger
1736 – 1809
Dittersdorf
1739 – 1799
Beethoven
1770 – 1827
Rossini
1792 – 1868
06 — Information

Performance Data

Date & Venue

Date
2026.8.22 (SAT)
Time
OPEN 18:30 / START 19:00
Venue
仙台市太白区文化センター 展示ホール
〒982-0011
宮城県仙台市太白区長町五丁目3-2

Presented by

Organizer
杜音株式会社